ミトコは最近疲れを感じていた。 「年齢のせい・・・かしら?」 以前はどんなに疲れたって、一晩眠れば翌朝には、もうすっかり元気だった。 週5日、駅前の大型スーパーの惣菜売り場で働いている。さかなをさばいたり、野菜の下ごしらえをしたり、フライや天ぷらをあげたりもする。お昼時は目がまわる忙しさだ。 人と会うことや料理することが好きで、昔からスーパーや弁当屋などで、厨房の中での仕込や接客の仕事をやってきた。 今は亡き父が故郷の海辺の町で地中海レストランのコックだった。 休日には、よく、父といっしょに料理した。 ミトコが料理好きになったのは、父を慕う気持ちからだと思う。今も、料理をしているときは父がそばにいるような気がするのだ。 自分で店をもつのが夢だった時もある。 「今は家族の専属料理人だけどね・・・」 それでも十分満足だ。家族の笑顔がミトコに元気をくれる。エネルギー源なのだ。 それが、いったいどうしたというのだろうか・・・。仕事は苦にならない。大変なこともあるけれど、何もしないよりはマシ。動き回っているのが性に合っている。 休みの日でも家にじっとしてるようなミトコではないのだ。 夫のカイトにはよく言われたものだ。 「君は、ミトコンドリアが元気なんだよ」 ミトコは、この春、42歳になった。 ミトコンドリアは、男女とも40代を超えると急速に減ってゆくらしい。
(続く)